14.先に出て待ってる

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後藤のお父さん。 「サンドイッチだ。良かったらお昼に食べてくれ」 「ありがとうございます」 後藤は敬語で答えてランチボックスを受け取った。 お父さんは頷いて私に顔を向けた。 「お越しいただきありがとうございました。また是非いらして下さい」 「はい。美味しいお料理をありがとうございました」 そして駐車場に行くと、車の前に猫が座っていた。 賢そうな顔をした、スリムなサバトラの猫。仁くんだ。 おはようと声を掛けたらニャーと答えてくれた。 後藤は彼の前にしゃがみ込んで背中を撫でた。 「母さんをよろしく頼むよ」 またニャーと答えると、猫は立ち上がって工房の方に帰って行った。 「行こう」 車に乗り込む後藤と工房を目で往復したけれど、彼を工房に誘うことは諦めて、私も車に乗った。 それから予定通りに観光する間、後藤はご両親の話はしなかったし、私も何も聞かなかった。後藤のお父さんが作ってくれた美味しいサンドイッチは、見晴らしのいいベンチで食べた。 東京に戻ってきて、目についたお店で車を停めて夕飯を食べて、また車に乗ってから今後の話をした。 「それで……これからどうする?」 「他に寄って行きたい所あるのか?」 「そうじゃなくて、私達は今後どうするのかって――」 「ああ……」 しばらく考えて、後藤は答えた。
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