76人が本棚に入れています
本棚に追加
『そうねえ……色んな人がいるから、勤め先の人や友達、こっちの親戚に後藤家の事情を詮索されるのは避けたいとなると、結婚式は難しいかしらねって、えっ? もうそこまで話進んでるの?』
あれ? そう言われたら……はっきりプロポーズの答えを聞いたわけじゃないかな。
『ねえ、その後藤くんの大叔父さんのペンションって何処にあるの? 何て名前?』
「聞いてどうするの?」
『どうって……どんな所か興味あるじゃない?』
不信に思いつつ教えてしまった。
『あなた達はもう大人だし、いつどんな形で結婚しようとあなた達の自由だけど、親としてはきちんと祝福したいから、婚姻届を提出する前にもう一度2人でこっちにいらっしゃい』
「うん、わかった」
連絡先を交換したことだし、早速後藤に報告しようかと思ったけれど、止めた。
こういう話は直接した方がいいよね。
いっそ家に行っちゃおうかな。
いやいやいや、さっき別れたばかりだし、引かれるわ。
でもずーっと考えてしまう。
後藤今何してるんだろう、お風呂入ったかな、もう寝たかなとか。
それで結局、寝る前に「おやすみなさい」って一言だけメッセージを送った。
そしたらすぐに返事が来た。
『おやすみ』
続けてスタンプでも送ってくるかと待ってみたけれど、何もなし。
文字でも寡黙なのねって思いながら、その四文字をしばし眺めてから眠りに就いた。
最初のコメントを投稿しよう!