15.私も守るよ

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「あらあなた達、来るなら言ってよ」 「これが届いたから来たの。これ何?」 「ああ、これはね……」 謎の器を手渡すと、母はそれに水を入れて床に置いた。 「テンテンちゃん、おいでー」 ああ、猫の水入れだったのか。 好奇心旺盛なお年頃のテンテンちゃんは、すぐに飛んで来て飲み始めた。 「後藤さんのペンション、素敵な所ね。日帰りで行って来たけど、次は是非泊まりたいわ。結婚式、いつにするの?」 「それも含めて色々とご相談したくて参りました」 後藤はそう答えて婚姻届を広げてみせた。 おおーって皆覗き込む。 結婚後の氏について相談すると予想通りの答えが返ってきた。 「私はどっちでもいいわよ。波美が後藤波美になりたいならそうすればいいし、仁くんが一条仁になってくれるのも、もちろん歓迎するわ」 そう言うと、母はサラッと証人のサインをしてくれた。 結婚式の日も決めて教えてくれればいいと言われた。 体調が良ければ、お爺ちゃんとお婆ちゃんも連れて行くって。 「よし、乾杯だ!」 「ああ、今日は帰らなきゃならないので……」 「いいよ、私が運転する」 後藤にはお爺ちゃんに付き合って貰って、私はノンアルコールで乾杯。 そして皆ですき焼きを食べた。 「じゃあそろそろ帰るわ。ご馳走様」 「ああ、ちょっと待って」 立ち上がったら母に呼び止められた。
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