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意外にもオシャレな店に連れて行かれて身構えたけれど、なんとかちゃんのドラマのロケで使われていた店らしい。
「いやー、男独りじゃ入りづらくてさ。一条さんも、まあ女だよね」
まあってなんだよって思ったけど、そこはこらえて笑顔を作った。
「あの、それで――」
「彼女は俺の推しだったんだ」
アイドル時代の日菜ちゃんの話。
語り出すと、彼は止まらなかった。
彼女は意外に苦労人らしい。母子家庭で育って、弟の学費を稼ぐ為にオーディションを勝ち抜いてアイドルになったそうだ。そしてお金を稼ぐという明確な目標があったからこそ、彼女は必死に努力していたという。
「握手は誰よりも丁寧だったよ。ちゃんと目を見て、しっかり話を聞いて、次に会った時にも覚えていてくれて――」
やっぱり日菜ちゃん、良い子だよね。
となると尚更疑問で、私は例の話について聞いてみた。
「でも彼女のせいで解散したって――」
「違う! こいつのせいだ」
突き出された携帯画面には、寝起きらしい日菜ちゃんとバッチリメイクした女が映っていた。どう見てもバッチリメイク女の自撮り写真で、それだけで意地が悪そうだってわかる。
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