4.手を繋いでもいいですか

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「でもやっぱり変でしょう? 一体何考えてるんだろうってちょっと怖くなりました。でも覗き込んだ彼の目は綺麗で、信じてみようと思いました」 「それで入籍したの?」 「はい。行く所なかったし、彼の妻になりました」 開いた両手を口の前で合わせて、日菜ちゃんはにっこり微笑んだ。 あー、眩しい。 これは確かに出会って3日でプロポーズするのも全然アリだわ。 自分じゃそうは言わないけど、ああ私に一目惚れしたんだなって日菜ちゃんも納得したんだろうね。 でも―― 「ご家族には……」 「言ってません。元気にしてるから心配しないでって書いた手紙を彼に託して遠くのポストに投函して貰いました」 「後藤くんの方のご両親は?」 「遠くに住んでらっしゃるみたいで、お会いしてません。訳ありの女と結婚したいって話したら、お前はもう大人だから好きにしたらいいって証人のサインした婚姻届と離婚届をセットで郵送してくれました」 そ、それだけ……?  「じゃあ日菜ちゃんがここにいること知ってる人って――」 「彼と波美さんだけですよ。波美さんのママと反対側の隣の方にも挨拶はしましたけどね」 つまり昔の人間関係は家族さえ切ってしまったということか。 「今は専業主婦ってこと?」 「肩書は高校生です。通信制の高校ですけど」 なるほど。今更普通の高校に入るのは難しいけど、それならアリか。 「通信制って通学はしないの?」 「学校によりますけど、ウチは年に数回だけです」
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