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イケメンなのに浮いた噂が全くなくて、イケメンだから男の方が好きなんじゃないかとも言われていたのに、ふっつーに可愛い元アイドルと昨日入籍しましただと。
なんだろう、なんかもう――凄い裏切られた気分。
昨日から――いや、昨日より多分ずっと前から、彼はこの女と暮らす部屋へ帰ってたってことか。私は今日も母親しか待っていない家に帰宅するっていうのに。
「ただいま」
「お帰り」
あーやだテレビの音する。
「ねえねえ、あの何だっけ、アンタが好きな――」
「はいはい、結婚したね」
「あの人アンタと同じ31歳だっけ?」
「そう」
「じゃあもう結婚してもいいわね。良かったわね」
「いいわけないじゃん、8歳年下の元アイドルだよ? あの子アイドル辞めたのつい最近だから、その前から極秘交際ってことでしょ?」
「ふーん、それ悪いことなの? 私そういうのよくわからない」
母は芸能人に興味がない。テレビの中の人をどうしてそんなに好きになれるのと真顔で聞いてくるタイプだ。
母が大好きなのは夫だけ。
私にはその方がよっぽど信じられない。
だってただのハゲだし。
浮気もしてたっぽいし。
ほんっとしょーもない父親で。
挙げ句に5年前、母を残して死んでしまった。
まあそんな話はどうでもいい。それより――
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