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「えー、お母さんでしょ? あんまり似てないね」
そりゃそうだ。
その実体は隣のお姉さんだからね。
日菜ちゃんにも聞こえたはずだけど、多分あえてスルーしてくれた。
いや、聞こえてなかったかな。
何かを見つけて目を輝かせた彼女は、前方を指さした。
「波美さん、あっち!」
ショッピングモール中央の吹き抜けに、ステージがあった。
客席はまばらで、でも歌って踊る少女達。
まだ世に出たばかりのアイドルグループだ。
客席に滑り込むと、日菜ちゃんは手拍子を始めた。
誰もやってないけど――あ、センターの子が日菜ちゃんを見て微笑んで頭の上で手を叩いた。
他の人も手拍子を始めた。少女達はその音に負けないように、一生懸命歌っている。
その熱気が伝わったのか観客が増えてきたけれど、それが最後の曲だった。日菜ちゃんが立ち上がったので私も立ち上がった。
「さて次は――」
「私、CD買って来ます」
えっ、今見たばかりのアイドルの? って思っている間に行ってしまったのでベンチに座って周りを見渡したら、後藤がこういう場所を避けていた理由の1つを見つけてしまった。
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