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大丈夫かなと思うだけで何も言えない私は、私の手を引いて歩き始めた彼女について行った。日菜ちゃんは私に似合いそうな服とか真剣に選んでくれたけれど、彼女は結局何も買わなかった。
「日菜ちゃん、本当に遠慮しないでいいんだよ。何が欲しいの?」
「いえ、大丈夫です。見てるだけで楽しいんで」
本当かな。あ、それとも――
「何か買って帰って後藤くんに見つかったら、今日2人で出掛けたことバレて怒られそう?」
「怒るっていうか心配させちゃうと思うんですよね……」
そっか、そういうことか。
大丈夫でしょなんて部外者の私には言えない。後藤に叱られるのは日菜ちゃんなんだから。
あ、そう言えば――
「あのさ、ちょっと前に後藤くんと喧嘩してるの聞こえちゃったんだけど、あれって……」
帰る前に少し休んで行こうって入ったカフェで思い切って聞いてみたら、日菜ちゃんは瞬きして首を傾げた。
「喧嘩?」
「うん。なんか物が壊れる音がしてバカバカって――」
「あー」
わかったって顔で頷いて、日菜ちゃんは笑った。
「違いますよ、あれ喧嘩じゃありません。だって彼の声聞こえました?」
あ、聞いてない。
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