77人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの日は彼が作っていった夕飯を独りで食べて、こんなに甘えてていいのかなって考えながら洗い物してたらお皿落としちゃって、自分が悪いのに急に彼に八つ当たりしたくなっちゃったんです」
そうだったのか……
「私、このままじゃいけないって思ってるんです。でも思うだけで何も出来ないのは彼が優しすぎるせいだなんて理不尽なこと考えちゃって。聞こえてたなんて恥ずかしい。ごめんなさい、近所迷惑でしたね」
「ううん、喧嘩じゃなかったなら、良かった――」
「良くないです。全然、良くはないです」
ああ……うん……。
でも理不尽に後藤を責める代わりに彼女が何をするべきかなんて私にだってわからないし、何も言えなかった。
「ごめんなさい。変な話しちゃって」
「ううん、聞いたの私だし、話してくれて嬉しい」
そしてカフェを出ると、そのまま駅に向かって電車に乗った。
「波美さん、私すっごく楽しかったです。でも貴重なお休みなのに良かったんですか?」
うっ、遠回しに彼氏いないのか聞かれてしまった。
「大丈夫。どうせ暇だし。また来ようね」
日菜ちゃんは察したのか、深掘りせずに笑顔で「はい」と答えてくれたけど、休日に人妻とデートしてていいのかしらって思うよね。
日菜ちゃん、私も――このままじゃいけないって思ってるけど、思うだけで何も出来ないよ。
最初のコメントを投稿しよう!