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「会ってみなきゃわかんない。彼女何処?」
至近距離に桜川陽の顔。
すっごい目力。動けない。
どうしよう。日菜ちゃんならもう結婚しましたなんて言えないし、そんな重要な告知、私がするべきじゃない。だけどこれって何か情報渡さなければ許されない状況……?
困っていたら桜川陽の携帯が鳴り始めて、彼は私を見据えたまま電話に出た。
「はい……は? 今から?」
電話の途中で彼は私から目を離したけれど、私は彼から目が離せなかった。
これが桜川陽。
日菜ちゃんが本当に好きな男。
――今も?
そして電話を切ると、彼は再び私を見据えて言った。
「急な仕事が入った。話は後だ」
「え、あの――」
「行ってらっしゃい」
可愛い子が私の腕にギュッてしがみついた!
えって顔したら、めっちゃ可愛い顔で微笑み返されて、見惚れている間に桜川陽は出掛けてしまった。
「あ、あの――」
「トウマだよ」
「へ?」
「僕の名前」
彼は私の腕を放してテーブルの上にあった雑誌を開いて見せてきた。
そこには彼の写真があって、「雪野冬真」と書かれていた。彼は桜川陽が所属するアイドルグループの研究生らしい。
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