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「あんた、もう置いて行かれたじゃん。そんな奴等の家の戸締まり心配してやるの?」
「空き巣にでも入られたら私が疑われるじゃないですか。ここで何か事件が起きたら同じマンションで暮らしてるあなただって面倒なことになりません?」
「ああ……なるほど」
「シャワー浴びて来ますけど、勝手に帰らないで下さいね」
そう言ってバスルームに駆け込んだら気が抜けて泣きそうになったけれど、こらえてシャワーを浴びていたら、バスルームの扉が開いた。
「待ってるの退屈だから、俺も入れて」
「私、もう出ます」
「そんなに怒るなよ。でも怒った顔綺麗だね」
ってキスされそうになったから、慌てて逃げようとしたら後ろから抱き締められた。
「バスルームの場所知ってたね。ここに来たの初めてじゃないだろ。妙に肝が据わってるしやっぱ陽の女?」
「違います。昨日寝る前に借りたから知ってただけです」
「寝る前に陽とやったの? あいつのセックスどうだった?」
「桜川さんはすぐに仕事に出掛けて冬真くんと2人になったって言いましたよね?」
なんなの、こいつ。桜川陽をライバル視してるの?
彼の女取ってやったって思いたいの?
振り払ってバスルームを出ると、彼は入れ違いに入ってシャワーを浴びたけど、セックス同様秒で済ませた。
「その話矛盾してるし、信じられないよ。なんか隠してるか嘘ついてるでしょ。助けた女性を部屋に残して朝になっても戻らないなんて――」
「嘘つきはあなたです。やらせてくれたら何も聞かないって言いましたよね?」
「言ったけど……なんか心配になっちゃって。大丈夫? 俺に何か――」
「結構です。失礼します」
急いで服を着てカバンを掴んで外に出た。追ってくるかと思ったけれどそんなことはなく、マンションを出てすぐ近くにあった地下鉄の駅に入ってから眠らされたお茶とかあの男の体液とか取ってくるべきだったかなと思った。
でも駅のトイレで鏡を見て気付いた。
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