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問題は、私の住所が多分バレてて、日菜ちゃんが隣に住んでるってことだ。
会社から直接帰宅するわけじゃないから今日は心配ないだろうと思いつつ、電車の中に不審者がいないか注意して、最寄り駅で降りてからは誰かに尾行されていないか確認しながら急いで歩いた。
うん? 後ろから足音が近付いてくる。
追いかけられてる? 逃げなきゃ!
え、速い、ダメだ追いつかれる――!
って思ったら転んだ。
「おい」
「ひっ!」
声掛けられて見上げたら、普通の男の顔があった。
「大丈夫か?」
怪訝そうに私の顔を覗き込んできたのは、後藤だった。
なんだ後藤かって立ち上がろうとした時、腰に激痛が走った。
イタタタター! 何これ、嘘、立ち上がれない!
「助けて、こ、腰が……!」
伸ばした手は、すぐ目の前にしゃがんでくれた後藤の背中に届いた。
「掴まれ。そこの接骨院まだ開いてる」
断る余裕はなかった。でも出来るだけ体をつけないようにしようとしたけど無理で、全面的に彼の背中に体を預けてしまった。
鼻先に、後藤の項。
え……なんかいい匂い。
やばい、頭に鼻埋めそうになった。何やってんの私!
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