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「ハ、ハハ、そうなの。いい年して勘違いしちゃって恥ずかし――」
「何かあったのか? 駅を出る時にもう様子変だったぞ」
見られてた! あれだけ警戒してたのに発見出来なかったってこと?
後藤、周囲に紛れ過ぎ。
「昨日不注意で個人情報バレちゃって警戒してただけ。自意識過剰よね」
「バレたって知らない奴に?」
「え……あ……昨日初めて会った人に勝手に携帯見られちゃって……」
「ああ、そういう……」
ってミラー越しに上から同情する感じの視線。
いや違うよ、婚活とかじゃないよって言いたいけど言えない。
「まあ家に変な奴来たりしたら叫べよ」
「う、うん、ありがとう。あ、あのそういうわけでもしかしたら変な男が来るかもしれないから日菜ちゃんに独りで外に出ないように言っといて」
「それはどうだろう。そんな話したら、かえって心配してそっちの家に行くかも。さっき一度帰った時に、接骨院に連れてったこと話しちゃったし」
「えー、話しちゃったの!?」
「だって一度帰ってまた出掛けるのに説明必要だろ」
そっか。いくら無口な後藤でも話すか。
「オバサンまだ帰って来てないのか?」
「うん。祖母が骨折しちゃってね」
「そうなんだ」
会話はそこで止まったけれど、後藤との会話の最長記録、大幅に更新。
そして車は無事、家に着いた。すると隣の家から日菜ちゃんが出てきてしまった。
「波美さん、大丈夫ですか!?」
「日菜ちゃん、大丈夫だから――」
「鍵貸して下さい、玄関開けて来ます。荷物も先に運びます」
「ごめんね、お願いします」
もー、日菜ちゃん優し過ぎるよ。
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