6.ここにいちゃダメですか

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「あー、その記事ねつ造です。確かに裕福な家庭ではなかったけど、そこまで貧乏じゃなかったですよ。母に失礼だから訂正して欲しいって事務所に訴えたら、プラスになる嘘だから受け入れなさいって言われました。嘘は否定するより上手に着こなすのがこの世界の常識だって」 「それ常識じゃなくて、単に事務所の都合じゃない?」 「そうかもしれません。でもそう言われたら、そう思うしかなくて……今考えると私、洗脳されてたのかな。事務所の寮で暮らしながら考える暇もなく忙しく活動してましたから」 そっか……怖。 そんな話をしながら日菜ちゃんに助けて貰って着替えや歯磨きも無事終えた。 独りだったら着替えもせずにソファに倒れたまま朝を迎えてたかも。 「日菜ちゃん、本当にありがとう。私もう寝るから、お風呂もキッチンも何でも自由に使って。布団はそこの奥の和室にあるから――」 「はい。そっちの部屋に運びますね」 別の部屋でゆっくり寝て貰おうと思ってたけど、まあいいか。 そっちの部屋というのは父が晩年使ってた部屋だ。 2階にある自分の部屋に行くのは大変だし、介護用ベッドがあるから。いずれ母が使うのかなと思ってたけど、自分が使うとは。 そして日菜ちゃんはすぐに布団を持って来てベッドの隣に敷いた。 「じゃあお風呂お借りしますね」
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