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「あのー」「あのー」
同時に話しかけてしまった。
「波美さん、どうぞ」
「あ、や……あ、明日後藤くん何時に来ると思う?」
「そうですね……早めって言ってたし、7時とか?」
「じゃあもう少し早い時間に目覚まし掛けようかな」
うっ、目覚まし時計に手伸ばすのキツい。
「私やりますよ」
「ありがとう」
日菜ちゃんにやって貰っちゃった。あーこれで安心――じゃなくて、しなきゃならない話はそれじゃないって思ったけど、先に彼女の話を聞いた。
「で、日菜ちゃんは何を言いかけたの?」
「そんなに大したことじゃ……明日早いしもう――」
「いいよ、気になるし、言って」
「ほんとに大したことじゃ……波美さんって中学まで仁と一緒だったんですよね。彼、どんな感じだったのかなって」
ああ、なんだ後藤の話か。
「うーん、そうなんだけど同じクラスになったことないし、ほとんど話したことなくて……」
「部活はやってたんですかね?」
「さあ……」
「成績は良さそうですよね?」
「さあ……」
「彼女とか……」
「ごめん、ほんとに何も知らない」
一切噂も聞いたことない。人のこと言えないけど、後藤って本当に地味な奴だったな。
「本人には聞いてないの?」
「話してくれないんですよ。知らなくていいって」
「えっ、夫婦なのに?」
返事がない。
これって大したことないどころか深刻な話じゃ――
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