ポイント

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葉子は高校生だ。 小学校の頃から使っている財布がぼろぼろになったので、近所の大型スーパーで、ワゴンセールの財布を買うことにした。 「一番安いの。。安いの。。」 と、値段が一番やすい黄色の財布をつかむと、会計を済ませた。 早速、休憩スペースで、中身を入れ換えようと、買ったばかりの財布をあけて、驚く。 買ったばかりの財布の中に30000円入っていたのだ。 うーーーーん。 これは、幸運と捉えるべきか。 なにかの罠なのか。。。 ああ、人生はいつだって選択の連続だ。 迷った末に サービスカウンターに向かった。 カウンターでは、泣きじゃくる小さな子どもをつれたお母さんが血相をかえて、 店員さんに説明していた。 「落とし物。。。じゃなくて忘れ物?かしら。こどもが、財布にお金をいれちゃったみたいで。。。。」 あせっているので、話が店員に通じない。 「えっと、、お財布にお金って、普通かと存じますが。。」 「そうじゃなくて、ここで売ってる財布よー」 どうやら、葉子の手元にあるのは、こどもが遊びのつもりで、おかあさんの財布から、売り場の財布に入れ替えてしまったお札らしい。 葉子が 購入した財布にお札が入っていたことを説明し 30000円をかえすと、店員もようやく事情を理解した。 「ありがとうございます。本当にありがとう。なにかお礼を。。」 と、言われたが、 「いえいえ。大丈夫です」 と、断った。遠慮というより、面倒だったのだが。 親子は、何度も頭を下げて、去っていった。 ピンポーン 頭上で、何か音がした気がした。 クイズで正解のときに出るおとににていた。 その日から、葉子の頭上では『ピンポーン』と『ブッブー』の音がしばしば鳴り響くようになった。 お年寄りに席を譲れば 『ピンポーン』 おちている空き缶を拾えば 『ピンポーン』 ときには、正解を選ぶのが苦しいときもある。 クラスの不良が先生に反抗して殴りかかったとき、すぐ近くにいた葉子は 怖くて、身動きひとつできなかった。 『ブッブー』 (いや。それは、無理よー。私止められないって。。) 常に正否を評価され続けるのは、かなりストレスが貯まったが、いつしか、仕方ないとあきらめ、月日がたった。 葉子は45才、夫は二年前に病死したが、20才になる娘の瑠美と幸せに暮らしていた。娘にはまだ紹介していないが恋人もいる。 ある日、葉子は道路に飛び出そうになった幼児を助けようとして事故にあってしまった。 病院に運ばれたが、もう、助かるのは難しそうだ。意識の薄れゆくなかで女神の声がきこえた。 「今まで、よくがんばりましたね。あなたがこれまで貯めた正解ポイントは54000ポイントあります。これをラッキーポイントに変換できますよ。」 「ラッキーポイント?」 「はい。ご自分で使えば、命をあと3ヶ月のばすことができます。 あるいは、他の身近なかたにプレゼントもできますよ。恋人さんとかむすめさんとか。」 今回の選択に迷う余地はなかった。 「全ポイント、娘におねがいします。」 その頃、瑠美は 母の事故をきいて病院に向かって急いでいた。 あまりに急いでいたので、信号が赤だったのにきづかず、飛び出してしまう。 車が急ブレーキをかける。 キキキーーー その瞬間、シャラシャラシャラ。。。と天から音がきこえた気がした。 「危ない!」 咄嗟に、だれかに腕をひっぱられた。 歩道に引きもどされて、へたりこんだ瑠美を心配そうに見ているのは、会社の先輩だった。 。。。。。。。。。 病院では、葉子が静かに息を引き取った。ホッとしたように安らかな顔であった。
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