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13
帰り道、宗方は黙ってバイクに乗り俺に掴まっている。
なんかさっきの女の子の件で微妙な空気になってしまったな、だけどあれはあれで良かったと思ってる、だって無事にあの親子が見つかったのだから。
それはこいつだって同じだって思ってたけど宗方にはちょっと違ったらしい。
「おい」
「なぁに?」
「少し止まるぞ」
「いいよ」
ちょうどベンチがあったのでそこで少し休憩することにした。 自販機があったので飲み物をついでに買う。
「宗方も何か飲むか?」
「じゃあミルクティー」
「ほらよ」
「えへへ、ありがと。 …… ねぇ、まだ怒ってる?」
「いいや怒ってないよ、そんな風に見えたか?」
「ううん、なら良かった」
「お前こそなんか元気ないけど……」
「世那君が怒ったから」
ジトッとした目で宗方は言った。 ついさっき「もう気にしてないよ」と言ったのにめちゃくちゃ気にしてるじゃねぇか。
「悪かったって」
「…… 私ね、つい許せなくなる時あるんだよね」
「え?」
「幸せそうな人を見ると」
俺はそう言った宗方の瞳の奥に何か暗いものを感じた。
「なんで?」
「なんでだろう? 自分がこんなだからかな? だからあの子の両親もこのまま見つからないでしまえばいいって思って…… 世那君の言う通りそれは良くないことだよね、わかってるんだけどそういうのもひっくるめて時々全部どうでもよくなってぶち壊したくなる」
言い終わった宗方はシュンとして顔を伏せた。
こいつのどこか不安定なところはそれが原因なのかもしれない、どうしてそうなっちまったのか…… いや、そんなこと気にしてどうする?
「…………」
「宗方……」
「………… はい、反省終わり!」
いきなり顔を上げてニパッと俺に笑顔を見せた。
「でも今日は楽しかったよ! バイクにも乗れてさ、風になるっていうの? それにクッションも取ってもらったし貧乏な世那君にジュース奢らせちゃったし」
「うるせー誰が貧乏だ、貧乏だけど。 そういやお前も両親居ないなら金とかどうしてんだ?」
「ああ、ママのお爺ちゃんとお婆ちゃんが毎月振り込んでくれてるんだ」
「ふぅん」
いろいろあったようだけどそこは援助して貰ってるみたいだな。 まぁそうじゃなきゃ俺に飯を奢ってやるなんてないだろうしな。
そう思ってるとグイッとミルクティーを飲んで宗方はメットを被った。
「ねえ、もう少しバイクに乗せて?」
「どっかで流せってこと?」
「うん、その分のお金は払うからさ。 いいでしょ?」
「…… はぁ、わかったよ」
「やった!」
俺もメットを被り後ろの席に跨っているら宗方の前に座ろうとしたら……
「お前パンツ丸見えだぞ」
「え? あッ!! …… 見たからやっぱお金はなし」
「は? なんでだよ? お前がそんな短いスカート履いてくるから」
「これはお洒落なの! 世那君も女の子になればわかるよ、それに私くらいの可愛い子のパンツ見といてその反応、もっと真っ赤になってしどろもどろになると思ったのに!」
「だから自分で言うなよ」
そんなリアクションとってほしかったのか? 宗方はスカートに手を被せて「早く乗って」と促した。
「さぁ発進〜ッ!」
宗方が俺にしがみついたのでバイクを発進させた。
「もっと飛ばそうよ!」
「死ぬからやめとく」
「ちえ〜ッ」
そして川辺に戻って宗方を降ろした。
「ふはッ、ジェットコースター終わった後みたい。 乗ったことないけど」
「…………」
スカートめくれてるんだけど…… そう言おうと思ったがまたあーだこーだ言われそうなのでさりげなくフラッとしている宗方の腰を掴んでスカートを下ろした。
「メット外せ」
「ん」
メットを外すと暑かったのか宗方の髪は若干湿っていた。
「汗かいちゃった、あとは帰るからいいんだけど」
「まぁバイクだろうと暑いのは暑いからな」
「自分だけ涼しそうな顔しやがって!」
「いってぇ!! は!?」
何故かムッとしたバチンと宗方に背中を叩かれた。 なんでなんだよ!?
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