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斉藤と昼飯を食べるって言ったって教室で一緒に食えるわけない、俺は弁当を取りに教室へと戻った。  斉藤はもう弁当を手に持っていたのは幸いだったな、2人揃って弁当持ってどこかへ行くなんて俺とじゃ悪目立ちしそうだ。 するとひとりで弁当を食っている宗方が戻ってきた俺を見た。  宗方の目が訴えていた、「何やってんの?」と…… それは俺が言いたいよ、まったくなんで斉藤と飯を食うはめになったんだか。 「あれ? 新庄今日は外で弁当か? 珍しいな」 こんな時に限っていつもはスルーな木戸が話し掛けてきた。 こいつマジでウザいな。 「ああ、別にどうでもいいだろ?」 「それはそうだけどな」 じゃあ話し掛けるなよ意味のないことしやがって。 「もしかして女と一緒に〜? なんて、なんてな!」 「ぎゃはははッ、んなわけねぇだろが」 木戸の友達が笑う、今のは一体何が面白かったんだ? まぁいいや、もく行こう。 教室から出て行ったらもしかして斉藤は居なくなってるんじゃないかと思ってたが律儀に待っていた。 「待たせたな」 「ううん全然。 えっと…… どこで食べよっか? あ! 待って」 とりあえず誰かに見られて笑いのタネになりたくないので足早にここから居なくなろうとしてさっさと歩いた。 「し、新庄君、速いッ」 すっとろいな、そう思って斉藤の腕を掴んだ。 「ひゃッ」 「ほら行くぞ」 「は、はい」 てかどこで飯食おう? そんなことを考えながら歩いていると階段を降りていた。 あ、そうだ、駐輪場の近くに屋根付きのベンチあったな。 あそこなら人来なそうだしちょっと距離があるがそこがいい。 進んで行くうちにどこまで行くのかとウンザリしてないか斉藤をチラッと見ると顔を逸らされた。 まぁ俺と弁当なんて罰ゲームみたいなもんだからな。  目的地へ着くとやはり誰もいなそうだ。  「新庄君?」 俺の歩みが少し速かったのか斉藤は少し息が切れていた。 まぁもう着いたので 斉藤の腕を離すと暑かったのかパタパタと手で顔を扇いでいた。 「ここでいいか?」 「え? な、何が!?」 「…… 食べる場所だよ」 「あ! そうだね、えへへ」 俺がベンチに腰掛けると斉藤も腰掛けたが膝に弁当を置いたまま地面を見つめて斉藤は硬直していた。 「やっぱ嫌だったか?」 「うえッ!? ぜ、全然! へっちゃらで…… す」 斉藤ってこんな奴だったっけ? 「食べないの?」 「食べます……」 「? あっそ」 なんか知らんが俺は弁当を食べ始めた。 だが何故か横から斉藤の視線がチラチラと感じような気がして斉藤の方を向くがサッと顔を伏せられる。 食べ辛い…… 「なあ」 「は、はい! ッ!? ゴホゴホッ」 「おいおい……」 俺が急に話し掛けたからか斉藤は食べ物を詰まらせたのか咽せている。 「ご、ごめんッ! あはは、いつもと違う人だから緊張してるのかな?」 「ふぅん」 「い、嫌って意味じゃないからね!?」 「そうか? まぁ俺も若干斉藤の気持ちはわかる」 「ほ、ほんと!?」 「ああ、俺はいつもぼっち飯だから逆に誰かと食べてなんて言われたらな」 「…………」 斉藤は何故かションボリして弁当を食べ始めた。  ほらな、俺と居るとこうなるんだよ。 斉藤も今はひとりで食べてた方がマシだったなって思ってるに違いない。 「新庄君……」 「ん?」 「新庄君のお弁当美味しそうだね」 「そうかな? なんとも感じないけど」 「新庄君って料理得意そうだったしもしかしてそのお弁当も新庄君が作ってたり?」 ………… そうだよ、と言ってもいいが「なんで?」と聞かれそうだ。 誰も居ないから自分で作るしかないから。 本当は売店で済ませたいところだけどお金が掛かるし。 「…………」 「あ…… 聞いちゃいけなかったかな? ごめん。 お母さんに決まってるよね、そ、…… それか彼女さんか」 はぁ?? こいつは何を言ってるんだ? アホなのか? こんなネガティブ思考で冴えない俺に彼女が居るように見えるか? 「彼女なんて居るように見えるか?」 「へ!? あ、いやその…… それは………… あ……」 斉藤はまた硬まった。 さっきから要領得ない会話ばっかだな。 「そんなん居るはずないだろ? 弁当は俺が作ってる、それでいいか?」 「ええッ!?」 何故かパアッと笑顔になった。 バカにしてんのかこいつ? と思ったがそれ以上は余計なことを聞いてこなかったのでまぁいいか。
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