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「あつ……」 俺の住んでいるアパートにはエアコンがない、なので1日中暑いままだ。 学校は夏休みに入っていた、ここ数日俺は特にやることもないので部屋でゴロゴロしていた。 でも学校の奴らのツラを見ないだけマシかな、ああいう人の中ってやっぱり苦手だ。 他の奴らだって輪を乱すような俺や宗方みたいな奴は不要だろうし。  あ、宗方はあれはあれで一部の男子からは需要があるのか。 じゃあ本当に不要なのは俺だけか。  だがそんな俺にもしつこく構ってくる奴が居るんだよな。 斉藤だ、結構ぶっきら棒に返事を返してもめげずに話し掛けてくるなんて物好きだよな。 ある意味いつまで続くか見物だが…… ずーっと干したまんまの洗濯物に斉藤がいつぞやボタンを付け直した制服が見えた。  ◇◇◇ 「これで元通りだね!」 「ほんとだ、ボタン千切れたなんてわかんねぇな、やり辛そうだったのに」 「…… えへへ、大して自慢出来るようなことじゃないけどこれでも裁縫は得意な方だったりするんだ」 「手間取らせたな、斉藤が直す必要なんか別になかったのにさ」 「ううん、そんなことないよ…… あ!! も、もし他に何か直す物があったらやろうか!?」 「いやそんなんないわ」 「そ、そっか」 ◇◇◇ 天井をボーッと見ながらその時のことを考えていると俺の携帯が鳴った。 俺に連絡寄越す奴なんて…… と思って見てみると宗方だった。 『電話』 それだけ来ていた。 俺に電話かけろってか? 面倒くさい、とにかく暑くてやる気も出ないし放っておこう。 汗が滴り落ちる中目を瞑るとヴヴーッと携帯のバイブが鳴る音が聴こえた。 なんだようるさいな…… 仕方がないので電話に出ると予想通り不機嫌な口調の宗方だった。 『見たよねメール?』 『ごめん気付かなかった』 『そんなわけないでしょ、万年暇な世那君が』 なんつー決め付け、まぁ当たってるんだけど。 『それよりなんだよ? こんなクソ暑いのに』 『それ関係ある? 今から出て来てよ、川辺で待ってるから』 『悪い、そんな気分じゃない』 『私もう待ってるんだけど?』 『はあ? そんなの知るかよ、俺は行かないからな』 『来ないんだ? じゃあ来るまで待つけど』 『話聞いてたか?』 『こんな暑い中私を川辺で待たせてたらどうなるだろうね? 熱中症で死んじゃうかも。 そしたら世那君に殺されたって遺書でも書いておこうかな』 なんて奴だ、俺を殺人者に仕立て上げる気かよ。 けど宗方の場合本当に俺にやられたって書きそうで不安だ。 『クソ野郎』 『野郎じゃないよ女の子だし』 『ちょっと待ってろ!』 くそ!! あいつのせいで穏やかに過ごそうと思ってたのに台無しだ。 外に出ると太陽の日差しでクラッとくる、やっぱ出掛けたくねぇな。 そう思いながらバイクを川辺に向かわせると宗方は川の近くでしゃがんで手と足を川に突っ込んでいた。 こいつは死にそうにないな…… と思ってたらバイクの音でこっちに気付いたようだ俺の方を見た。 「遅いじゃん」 「呼び出しておいてそれかよ?」 メットを脱ぐと幾分涼しくなった。 宗方を見ると今日は若干化粧が大人しめだった。 「わぁー凄い汗だね」 「誰のせいだよ?」 「誰だろねぇー?」 すると宗方はバッグからハンカチを取り出した。 「とりあえず汗拭きなよ?」 このハンカチで汗拭いていいの? とは思ったけど勝手に呼び出されたのがムカついてて拭いてやった。 「それで急に呼び出したのはなんのためだよ?」 「んー気分?」 「は?」 「今日暑いじゃん? だからバイクで走ったら気持ち良さそうだなぁって。 私バイク持ってないし」 「…………」 それだけのために呼び出したのかよ? 無視してればよかった。
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