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「あ、あの新庄君!」 「悪い、いそ……」 お昼になり教室から去ろうとした俺に斉藤が話し掛け掛けてきて遠回しに相手にしないでくれと言いたかったが朝のことを思い出して言葉をしまった。 「?? 都合悪かった?」 「いいや」 今この場で斉藤と話すのはさっきのことがぶり返しそうでぶっちゃけ都合が悪い。 ……が、この場をないがしろにすると更に都合が悪くなりそうなので渋々だ。 「あのさっきは本当にごめんなさい」 これで何度目だ? 目が合う度にそれだ、いい加減もういいっての。 「斉藤」 「は、はい」 「さっきの件は俺が悪かった、朝から少しイライラしててさ」 「ど…… ううん、でも今日の新庄君少し怖かった」 「ちょっといろいろあってな」 「宗方さんと?」 「いや別に」 というか宗方のことなんだから斉藤にとってはどうでもいいだろ? なんでそんなに寂しそうな顔してんだよ。 「沙優奈お昼食べよ? …… チッ」 山梨が来て最後に俺に向けて舌打ちをした。 こっちがしたいっての! 「環奈、新庄君にこれ以上やめて」 「だってさぁ」 「お願い、舞にも言っといてね?」 「はいはい……」 珍しく斉藤が山梨を諫めた。 ふぅ、これで一安心ってわけでもないがこれで話は終わりだよな。 「じゃあ俺も行くわ」 「あ、新庄君!」 「なんだ?」 「おはよう」 「?? おはよう」 何故かおはようを言ってきてそれに答えると笑顔になって斉藤は山梨と一緒に藤岡のところに行った。 なんなんだよ? そうして宗方は捕まらず放課後になって俺は美術室に来ていた。 まぁこんなの時間稼ぎだな、それにここに今宗方が来るとも限らないし…… と思っていると扉が開いた。 「え? 宗方……」 「何よその驚いた顔は?」 「あ、いや、来たんだって思って」 「何それ、来ちゃいけなかったわけ? てか今日の光景見物だったわね、あいつ泣かせるとか」 「うるせぇ、そんなのどうでもいいわ」 「へぇ〜、ふぅん」 宗方はニコニコとしている。 機嫌が良いのか?  「夏休み楽しかった?」 「唐突だな? 別に」 「誰かと遊んだ?」 「特に何もない、ていうか……」 「あ、ねえねえ、私のあげた扇風機ちゃんと使ってる?」 「は? まぁお陰様でほんの少し快適になったよ」 「それは何より」 こうしてどうでもいい話をしていたんだがやっぱり今日の宗方は機嫌が良いみたいだ。 先輩との裏取引が控えているとも知らず呑気なもんだ。 もういいか? こいつを切ってこの厄介者との関係も終わりにするか。  「じゃあ前に言ってた通り世那君の家に行かせてよ? そしたらもっと必要そうな物わかると思うし」 「え? 他になんかくれるの?」 「そりゃ私ら親が居ない者同士だし必要になりそうな物とかわかりそうじゃん? それに友達なんだし」 これはあれか? こういう時に限って変に宗方が優しくなって俺は宗方を売るのが…… いやいや、それだとしたらなんて意志が弱いんだ俺は。 けどそもそも宗方を売るなんてあいつらに言ってないし。 結局宗方には先輩のことは伝えなかった。 そう、これはいろいろ物を恵んでくれたせめてもの礼だ。  タダより高い物はない、俺は宗方から物を貰う代わりに今から先輩達にボコられるだろう、抵抗はするけど3対1じゃ分が悪いだろ。 「せーなー君!」 駐輪場へ着くと野太い声で宗方と同じ呼び方で俺を呼ぶ先輩。 くそ、今ここに隕石でも落ちてきて先輩に直撃して死んでくれねぇかな。 「約束覚えてる? 忘れるわけないよな? でもあれれ、宗方はどこだろう?」 ムカつく言い方でもう大体察しがつくであろうことをベラベラと…… 「あいつ来れないんで代わりに俺が来ました」 「ほぉ、けど生憎お前じゃ意味ないんだが?」 「ああ、でもひとつ」 「ん?」 「全身下半身みたいなお前らに宗方を近付けるのは流石にちょっと可哀想なんで。 てか無理矢理でしか相手されないなんて俺より無様ですね? そりゃ宗方にも相手にされないわ、ぷぷッ」 「おい、こいつやっちまうか」 「だな」 「覚悟しろ」 今日は散々だな、クラスの奴らには罵倒されるわこんなバカの相手もするなんてきっとボコボコにされたらザマァwwwとか思われるだろう。 ◇◇◇ 「はあはあ…… こいつしつけぇ」 あれ? 思ったより食い付いてる。 3対1なんだけど…… 「いい加減くたばれ!」 「うぐッ」 先輩Aのパンチが俺の腹に減り込んだけどなんとか耐えて逆に殴り飛ばした。 「げッ!? 村山ァ!」 あ、先輩Aって村山って名前だったのか、どうでもいいけど。 あと…… 2人。 「てめぇッ!!」 「調子こいてんじゃねぇぞ!」 「キツ……」 ◇◇◇ あー知ってるこの天井、俺のボロアパートの天井だ。 あれからどうなったんだっけ? …… そうだ、あの後先輩達は教員の目に留まり警察沙汰を起こしたばかりの先輩達は今回はスルーされてもらえずまた停学になったんだ、そして俺は夏休み明け早々に自宅療養か。 何してんだ俺。
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