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傷も目立たなくなってきた、今日から普通に登校出来るな。 でもまたあの先輩達から因縁付けられても困るしなぁ、バイクは違うところに置いて今度からはあそこはなるべく通らないようにしよう。 普通だったらこんな目に遭うこともなかったのに宗方のせいで…… やっぱり深入りするとろくなことになんねぇよな。 これを教訓としてあいつとはもう関わらん! 俺は気持ちを新たに学校へ向かった。  ええとバイクはどこに置こうかな? そうだ、教員達が車置いてる隅っこに置かせてもらおう、俺が捌かれてる間もスルーしてたんだし何も文句言われねぇだろ。 そしてバイクを置いて教室に行き席に着いた。 ここ4日休んではいたものの特段変わったこともないようなので少しホッとした。 「おはよう」 「…… ああ」 いつもの前の席からの挨拶を軽く受け流し席に座る。 俺の顔を見てチラッと2度見はされるが擦り傷程度にしか見えないし問題ないよな? と思ったが…… 「なあなあ」 「え?」 誰だよこいつ? とまではいかないがなんだよ俺に話し掛けてくるなんて珍しいなと。 俺に話し掛けたのは木戸 雅人(きど まさと)という所謂陽キャって感じの奴だ。 「その傷さ、この前末永(すえなが)先輩にやられたんだろ?」 「末永? ああ、あの中の誰かか。 てかなんで?」 「通り掛かったからさ、まぁすぐに隠れたけど」 見て見ぬ振りか、別にこいつに何も望んでるわけじゃないからいいけどさ。 「いやいや、そんな怖い顔するなって。 大丈夫かな? くらいは思ってたんだぜ」 「そりゃどうも」 「んだよ、愛想ねぇな」 「それ以外どう言えっていうんだ? ありがとなって言われたかったか?」 「いやさ、ここの学校の教員ってそんなん見てもスルーしたろ? 隠蔽体質って言うんかな? だから可哀想になって」 「それも見てたのか」 「まーろくでもねぇ学校だよな? でもそのかわりある程度自由っちゃ自由なんだけどよ」 田舎の人は心が優しいとか聞いてたけどあれは嘘だな、田舎過ぎて卑屈になってんじゃないか? 寧ろ少し開けたとこの奴らの方が人当たりも良くてここより大分マシなんじゃないだろうか。 ここまで見てきた俺の勝手な憶測だが。 「でさー、気になったんだけど……」 木戸は声を小さくして言った。 「あそこの場面にいたのって宗方だよな?」 しっかり見られてるじゃねぇか宗方…… 「お前さ、末永先輩と宗方の間で何かあったわけ?」 「はぁ?」 「宗方って少し孤立してる感あるけどなかなか顔整ってるじゃん? あいつもお前と同じで絡み辛そうなタイプだけどさ、それでどうなんよ?」 「どうなんよ? って言われても俺とあいつは特に何もないわ」 「なんだよつまんねぇな」 話から察するに宗方が途中から飛び込んだとこまでは見てないらしいな。 すると木戸がクルッと回って反対を向いてた奴に「なんもねぇってさ」と言った。 はぁ、結局それが聞きたかっただけか。 と思ったら後ろにいた奴らも俺に話し掛けてきた。 何発殴られた? とかどこまでやられた? とか…… 人の不幸を面白おかしく語りやがって。 そうして今日1日が終わり帰ろうとしたところ俺は戦慄した。  な、ない…… 置いていたはずのバイクがない。 鍵は俺が持ってるし。 いやまぁ押せば動くんだけど。 もしや教員の誰かが? 俺が茫然と立ち尽くしている時だった。 「どしたん?」 その声は…… 「宗方…… またてめぇか?」 「ちょッ! 怖ッ!! 怖いよぉ、どうしたのかな? って思って話し掛けただけじゃん?」 「どうしたもこうしたも俺がこうしていることに察しがつかないか?」 「バイクがなくなった?」 「即答だな、つうことは犯人はてめぇだ、1度ならず2度までも俺に何か恨みでもあるのか?」 「だから怖いって、怒らないでよ! なんで私が世那君のバイクを隠さなきゃいけないの?」 「俺を困らせたいからだろ?」 「んー、違うね。 この前私の話の途中なのに聞かないで帰っちゃうからだよ」 ん? うん? 「その言いよう…… やっぱりお前が犯人なんじゃねぇか!」 「あはは、バレちゃった?」 「バレるも何も最初からお前を疑ってたんだが? それで俺のバイクはどこだ? 次第によっちゃ……」 「あるある、今持ってくるから!」 すると駐車場のもっと奥にあるところへ宗方は行った、なんとそこはゴミ捨て場…… の陰からバイクを押してきた。 あの野郎俺のバイクをゴミだと思ってんじゃないのか? 「あー重かった」 「重かったじゃねぇよ、ここまで嫌がらせをするなんてよっぽど俺のことが気に入らないらしいな」 「わッわッ! 違う違う、そうじゃなくて話の途中って言ったでしょ?」 「話の途中?」 「だからこの前私が世那君のバイク見つけたのに連絡先知らないから困ったなぁって言ったじゃん?」 「それが何か?」 「だから連絡取れるようにしとこ?」 ………… は? 「もう俺のバイクは見つかったからお前は用済みなんだけど? それなのにこれ以上何かあるのか? あ、まさかまだ俺に嫌がらせするつもりじゃないだろうな?」 「そうくる? まったくもうどれだけ私を疑うのよ」 「よくそんなことがほざけるな?」 「あの末永先輩達ってムカつかない?」 「あ? まぁあんなことされてムカつかないわけないよな」 「でしょでしょ!?」 「だからってなんだよ?」 「懲らしめてやらない? 私達で」 「は? 寧ろ俺からしてみればお前も懲らしめたいが」 「ああんもう! 話を聞いて?」 そう言うのでとりあえず話を聞いてみるとそれは相変わらず末永先輩とやらがウザいので宗方は学校外で奴を誘き出して俺に警察に通報させようという魂胆だ。 「ね、名案でしょ?」 「…… まぁ話はわかったがそんな上手くいくか? ここら辺って交番は確かにひとつあったけど」 「だってここの教師のやる気のなさじゃあいつら懲りないでしょ? でも流石に警察来たらあいつらだってビビるでしょ」 「それに俺が協力しろと?」 「世那君だってあの先輩達が居ると肩身が狭いでしょ? バイクだってこんなところに置いちゃって」 それは確かにそうだけど。  「大丈夫、世那君は通報してくれるだけでいいんだから気楽なもんでしょ?」 「俺をまた面倒事に付き合わせようとしてるくせに何が気楽だよ? つか別に俺の連絡先しらなくてもタイミング合わせて俺が警察にたれこめば良くないか?」 「万が一って時があるでしょ? 私に何かあったら協力者の世那君もああしてれば良かったとか自責の念に苛まれない?」 「俺がそう思うと?」 「いいからいいから。 はい出して?」 「はぁー……」 けど確かに目障りなのは変わらない。 これは承諾した方がいいのか断るべきか……
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