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闇は灰となり。
「燃えてる」
休みの丸一日。
僕はずっと街の暗渠をうろつき、そうして自宅のアパートに帰ってきたら燃えていた。
「焼け出された」
財布も携帯も着替えも、少ない家族との思い出もなにもかも炭になった。
「朝早くに黒くなりたくて家から直接出たのは失敗だったな〜」
ない。もう何もない。
この怪しさ全開の格好では人前には出れないし、出たくもない。
なにより、全焼したアパートの現場検証のため規制線が張られ警察の数が増えたのも、僕が躊躇する物差しになった。
「隠れよう」
そう決心した僕は一旦林の中の隠れ家。
掘っ立て小屋の更衣室に戻り一晩そこで身を潜めつつ眠り、翌朝早くに起きて会社に事情を説明する電話すらかけられない事実に気付かされ、無断欠勤からの無職確定な未来像に頭が燃えカスの灰以上に真っ白けになった。
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