母守りうた

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なんだろうな わからねえんだ 音のすくない白いへやで あんたはいつも眠ってる たまに 目をあけるときもあったっけな でも あんたは目をあけたまま眠ってんだ あんたを見てるとよ 母校のさくらをおもいだすぜ あんだけぶっとくて どっしりしてたのに いま すかすかになって ぶったおれてんだ 渇いた木目 ざらつく手ざわり とげが刺さるかと思ったね なんだろうな わからねえんだ 今日も今日とて白い寝床で あんたはずっと眠ってる もう目もあけねえな めんどくさくなっちまったか おれもそうだよ めんどくせえ あんたを見てるとよ いやになるぜ さくらは ばらばらに砕かれて もう とうに燃やされちまったよ 冷蔵庫のなか うまそうなプリンが すっかり腐っちまってた なんだろうな わかってたのによ あんたは 今日からもずっと 眠る 眠るところが変わるだけさ ただ それだけのこと あんたをみる意味が なくなって 重たいせなかの荷はおりた おれは どうやら自由になる あのけむりみたく どこだって行ける でも いまは 動きたくない さくらのにおいがしてるんだ なんだろうな わからねえんだ
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