Another View—時憂・過去—

1/1
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

Another View—時憂・過去—

※過激描写・残虐表現があるので苦手な方はページを閉じることを推奨します。  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  時憂が十七歳の知能を持つのは、兄の脳を時憂の脳に継ぎ足したから。  そんなことが可能なのか、時憂にはわからない。  兄は不運にも事故で死んだことになっている。  本当は違う。  実験のやられすぎで死んだ。  時憂はその時一歳だった。  たったの一歳児では状況が解っていても何もすることが出来ない。  時憂は生まれ持っての天才児だった。  自覚はあった。  赤ん坊の頃から兄が実験台にされていることも知っていた。  どうして両親が居ないのかってことも。  兄を実験材料に使われることに反対して、殺された。  この世の中はオカシイ。  人が嫌っていうほど死んで逝く。  両親だけではなく兄までも。  時憂は生まれ持っての天才児だった。  それは兄のクローンだからだ。  生まれたときから兄と同じ知能があった。  この思考だって時憂のものじゃない。  (オリジナル)のものだ。  深黒のことをスキだって気持ちも疑わしい。  でも、時憂はそのことだけは疑わない。  それに疑いだしたらキリがない。  超能力で心も読めるし、真実しか時憂の目には映らない。  偽りなんて壊すのがたやすいシャッターだしね。  でもそんな超能力ですら時憂のものじゃない。  兄の脳を移植した拍子に備わった。  研究所の連中はそのことは知らない。  実験も失敗したと考えているからか、時憂は廃棄された。  何もない場所に捨てられる。  殺すことすらされないことに時憂は人間ですらない道具なのだと悟った。  だけど時憂は深黒に拾われた。  そして、今に至る。  そうだ、深黒は?  目を開けると思わぬ光景が眼前にあって赤面する。  何で深黒は裸なの?  ここは、ベッドの上?  ってことは、夜か。  深黒、寝るときは服着ないからな。  時憂のことを抱きしめてくれている。  暖かい。  さりげない優しさが染みて、心が痛いや。  深黒の柔らかくて引き締まった腕の中に収まる。  これが幸せなんだろうか。  背中に何かが当たる。  時憂の後ろに誰かいるのか?  ……幻真?  幻真も万里に後ろから抱きしめられて眠っている。  兄弟ってああいう風に仲が良いものなのか。 「!?」  二人を見ていると、幻真が苦痛の表情で泣いている。  幻真、心を見せてもらうよ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!