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一か月の過ごし方
「蓮夜は残りの一か月、何して過ごしたいの?」
「そうだな......楽しい思い出をたくさん作りたい」
「例えば、どこに行きたいとかある?」
私は蓮夜の答えにまた質問を返す。
「明後日から入院なんだ、不治の病だからもうどこかに行くことも出来ないかもしれない」
そういうと、蓮夜はうつむく。
墨汁で染めたような黒い目が太陽の光でゆらゆらと揺れた。
そっか、病気になるといろいろな制限があるもんね。
それに蓮夜の症状が重いのなら普通より多くの制限があるだろう。
多分、この卒業式に出るのも医者に説得したのかもしれない。
その中で少しでも残りの一か月を楽しく過ごす方法なんてあるのかな――?
とりあえず、家に帰って病室でも蓮夜の願いをかなえられるものを探そう。
もしかしたら、何かいいものがあるかもしれないし。
でも、そのためにはもう少し蓮夜に聞かないと。
「楽しい思い出を作りたいって言ってたけど例えば何をしたい?」
「きれいな景色を見たり、ゲームをしたりかな。とにかく、知華と残りの期間を過ごせればいい」
私と残りの期間を一緒に過ごしたい。
その言葉にドキッとした。
でも、私と一緒にいたとしても楽しくなきゃいけないよね。
二人で最高の一か月にしたい。
それは私も蓮夜も同じ。
「ありがとう、家に帰って病室でもできるものを探してくるね」
私は笑顔を浮かべるとくるりと蓮夜に背を向けた。
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