サプライズ

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サプライズ

 あれから二週間後。  蓮夜の余命まであと二週間を切っている。  あと二週間したら必ず死んでしまうということではないけど、蓮夜の体調はあまりよくはなかった。  多分、あの卒業式は無理をしたんだろうなと思えるほどだった。  蓮夜が入院してからは私の家から近いということもあり、できる限り毎日蓮夜の様子を見に行っている。  今日も、そのお見舞いに行くために用意をした。  でも今日は特別で蓮夜の願いをかなえるサプライズをしようと思っている。 「ねぇ、結城。結城が誕生日プレゼントにもらっていたあれを借りてもいい?」  私は結城に話しかける。 「えっ、別にいいけど。急にどうした?」 「あぁ……ちょっとね」  私は結城が誕生日プレゼントでもらったものを受け取るとさっとカバンの中にしまう。  もう一度、忘れ物がないか確認すると私は家を出た。  まだ、家を出てから五分もたっていないのにもう病院が見えてくる。  私は蓮夜に会うのが楽しみでいつの間にか早足になっている。  最後は駆け足になって蓮夜の病室に入った。 「どうしたんだ? そんなにあわてて」  息を切らしながら入ってきた私を見て蓮夜は目を瞬かせる。 「いや、なんでもない」  そうごまかして私は蓮夜が横になっているベットのそばにあるイスに座った。 「今日はね、特別なものを持ってきたんだ」 「特別なもの?」  蓮夜が聞き返してくれる。 「これをつけて。話はそれから」 「これってVRゴーグルだよな? なんで知華が持ってるんだ?」 「結城が誕生日プレゼントにお母さんに買ってもらったんだよ。それを借りてきて今日持ってきたんだ」 「そうか」  蓮夜がそっけなくつぶやくとVRゴーグルをつけた。 「あ、あの……何にも見えないのだが」  蓮夜が言いにくそうに言う。  その蓮夜の言葉を聞いて私はスマホを取り出した。 「うん、今から映像を映すからちょっと待ってて」  そういうとVRゴーグルをパカッと開けて自分のスマホを入れた。 「わぁ」  小さい歓声が上がる。 「すごい、きれい……今までで見たことない。こんなきれいな満開の桜」  そう、今蓮夜に見せている動画は満開の桜があたり一面に広がっている動画。  今年の桜は蓮夜が生きてる間に咲かないかもしれないという不安があった。  だから蓮夜にきれいな桜の景色を見せたかった。 「知華、ありがとな」  いつの間にかVRゴーグルを外した蓮夜がそう言って笑顔になった。  その笑顔に私はドキッとして目をそらした。  喜んでもらえてよかった――。  私はふっと笑顔を浮かべる。  そんな楽しい日々の中、タイムリミットまで刻一刻と迫っていたんだ。    
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