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ややあって、その靴は、冬樹の許に届けられた。
ズック靴と呼ばれる、布を用いて作った、ゴム底の白い運動靴だった。
二十八センチで先が尖っているデザインだ。
「思っていたほど、踵がすり減っていないですね」
手袋をした状態で靴を確認していた清貴は、ふと眉根を寄せる。
清貴は、右の靴の外側に染みが付いているのを指差して言った。
「これはなんの染みか、調べてもらえますか?」
冬樹は、分かった、と頷き、すぐに靴を部下に預ける。
その後、靴に残されていた染みは、毒液であったことが分かった。
それは梨に混入された毒物と同じものだったのだ。
同じ頃に、靴の所有者も分かった。
花屋敷家の後継ぎである長男・菊男の物だったのだ。
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