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花屋敷菊男の部屋では、十一歳の長男・菊正と、四歳の菊次郎が、丸めた新聞紙を刀にして、叩き合っていた。
「二人とも、静かになさい!」
母の正子が金切り声を上げている。
冬樹は不快そうに顔をしかめ、秋人は「おー、元気だな」と笑う。
そんな中、清貴は裏の林で発見された白いズック靴を菊男に見せた。
「菊男さん、この靴に見覚えはありますか?」
「――たしかに、それは俺の靴だが、もうずっと履いていない。ズック靴は楽だと思ったんだが、それ、先が尖ったデザインだろう? 俺の足には合わなかったんだ。やっぱり、靴とスーツはオーダーメイドに限るな」
菊男の言葉を聞き、秋人は『自慢かよ』とうんざりした顔を見せたが、清貴は、同感です、と頷く。
「それで、この靴はどこに置いてましたか?」
「どこって、捨てたと思っていたよ……この靴が何か?」
菊男は警戒心をあらわにしながら問う。
彼も、母親の部屋に何者かの足跡が残されていたのは知っている。
まさか、この靴だというわけじゃないだろうな、という雰囲気だ。
そんな疑問に、冬樹が答えた。
「事件現場に残されていた足跡ですが、この靴と一致したんです」
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