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「大体、こんな履いてない靴、お前がちゃんと捨てないから悪いんだ!」
「ですが、勝手に捨てたりしたら、あなたはいつも……」
「黙れ、口答えするな!」
夫の横暴な言いように、正子は言葉を詰まらせる。
菊男は大声を出したことで少し冷静になったのか、ふん、と鼻で嗤った。
「で、あなた方は、この靴の持ち主である俺が犯人だと? 犯人なら、わざわざ自分の靴を履いて犯行に及ぶと思いますかね?」
その言い分はもっともであり、秋人は「そうだよなぁ」と洩らす。
清貴も、そうですね、と同意する。
「あなたが犯人と言っているわけではありません。ただ、事情をお訊きしたかったのです。昨夜から今朝にかけて、あなたはどこで何をしていましたか?」
「これが噂のアリバイ調査ってやつか。昨夜から今朝は普通にここで寝ていたよ。昨夜は夜十一時にこの部屋に来て、ベッドに入った。で、今朝の騒ぎで叩き起こされたよ」
「寝ている間、何か気付いたことはありましたか? 奥様にも伺いたいです」
清貴にそう問われ、菊男と正子は、何かあっただろうか? と顔を見合わせる。
「いや、特に」
「私も主人も眠りが深いのか、一度寝てしまえば、雷が鳴っても起きないことが多くて」
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