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百合子は、先ほどのソファーに座ったままの状態だった。
膝の上のひらがなボードをトントンと叩いている。
『たんていさん』という文字が並べられていた。
清貴は、百合子の腕をトントンと叩いてから、『はい』と答える。
『あのときのこと つたえます』
『よろしくおねがいします』
と清貴は返事をする。
『へんなかんじがして わたしはおきました』
変な感じとは、犯人と母親が争っていたことを言っているのだろう。
目と耳が不自由な分、百合子は振動を含めた感覚が敏感なようだ。
『なにか わかったことが ありましたか?』
清貴がそう問うと、百合子はすっくと立ち上がり、傍らに置いてあった杖を手に危なげなく、隣の自分の部屋へと向かう。
清貴、秋人、冬樹、他の警察官や使用人、長女の薔子に蘭子もその様子を見守っていた。
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