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百合子は自分の部屋に戻ると、慣れた様子で自分のベッドに横たわる。
どうやら、その時の再現をして見せるようだ。
不可解な気配と振動を感じた百合子は、体を起こして、足をベッドの外に下ろす。
そのまま立ち上がり、ベッドのフットボード側に体の向きを変えて、母が側にいるのかと手を伸ばした。
その時、百合子の手は何かを触ったようで、驚き手を引っ込める素振りをする。
百合子は一拍おいて、自分の頬をトントンと叩く。
「――そうでしたか、あなたは、犯人の顔に触ったんですね」
えっ? と秋人は首を傾げた。
「どうして、そんなところに犯人の顔があるんだ?」
百合子が手を伸ばした角度は、目の前に垂直だった。
すると冬樹が口を開く。
「おそらく、犯人は落としてしまった注射器を拾おうと腰をかがめたところだったんじゃないか? その時に百合子さんに触れられて、慌てて逃げ出した」
「あ、そうか。だから、注射器は回収できずにベッドの下に入ったままなんだな」
秋人は、ぽんっ、と手をうち、他の皆も納得した様子を見せている。
それについて、清貴は何も言わなかった。
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