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「わ、私はそんなこといたしません! 百合子お嬢様は、皆さまが思うよりも自分で自分のことができます。御髪だって、ご自分で編まれるくらいですし、百合子お嬢様のお世話は皆さまが思うほど大変ではありません。何よりとてもお優しい方です」
「そうよ、蘭子。自分の疑いを晴らしたいのは分かるけれど、誰かに罪を擦り付けるような真似はおやめなさい」
「――っ」
蘭子は勢いよく部屋を出て行く。
「あっ、蘭子さん」
秋人が彼女の後を追った。
清貴は続けて、百合子に質問をする。
『ばにらは おかしや あいすのにおいですか?』
百合子は考え込むようにした後、文字を並べた。
『すこしちがう じんこうてきなかおり』
人工的……、と清貴はつぶやき、
『ありがとうございます なにかおもいだしたら またおしえてください』
そう文字を並べて百合子の肩を優しくさすった。
清貴は立ち上がり、部屋の外に目を向ける。
廊下では、どうやら秋人が蘭子と話をしているようだ。
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