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「――そう。秋人さんは、あの探偵さんの助手なのね?」
「ええ、ですので、どうか、この梶原秋人にお任せを」
「頼もしいわ。こんなことになるなんて、私、怖くて」
蘭子は美しく、異性を惹きつける媚薬のような魅力を放っている。
男好きという蘭子の評判を聞くと、大抵の男性は眉を顰めるが、実際に彼女を前にすると、ほとんどの男は鼻の下を伸ばすのだ。
それは、秋人も例外ではなかった。
蘭子は怯えた素振りで、秋人の胸に寄り添う。
ごくり、と秋人の喉が鳴る音が、部屋の中にいる清貴と冬樹にも聞こえた気がした。
二人は揃って、冷ややかな視線を秋人に送っていたが、秋人は気付いていない。
「秋人さん、怖いから、抱き締めてくださらない?」
「ええ、いくらでも!」
秋人が鼻息荒く、蘭子を抱き締めようとした瞬間、
「蘭子さん、僕もあなたのお力になりたいと思います。どうか、お話を聞かせていただけませんか?」
清貴が蘭子の方を向いて、にこりと微笑む。
秋人よりも頼りになりそうな男前の言葉に、蘭子は「あら」と目を瞬かせて、するりと秋人の腕から抜けた。
「私の話で良かったら、いくらでも」
そう言って蘭子は清貴の腕にすり寄ろうとしたが、「では、下で」と清貴は踵を返してかわし、一階の応接室へと向かった。
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