第二幕 第二の事件

25/31

5434人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
「――そう。秋人さんは、あの探偵さんの助手なのね?」 「ええ、ですので、どうか、この梶原秋人にお任せを」 「頼もしいわ。こんなことになるなんて、私、怖くて」  蘭子は美しく、異性を惹きつける媚薬のような魅力を放っている。  男好きという蘭子の評判を聞くと、大抵の男性は眉を顰めるが、実際に彼女を前にすると、ほとんどの男は鼻の下を伸ばすのだ。  それは、秋人も例外ではなかった。  蘭子は怯えた素振りで、秋人の胸に寄り添う。  ごくり、と秋人の喉が鳴る音が、部屋の中にいる清貴と冬樹にも聞こえた気がした。  二人は揃って、冷ややかな視線を秋人に送っていたが、秋人は気付いていない。 「秋人さん、怖いから、抱き締めてくださらない?」 「ええ、いくらでも!」  秋人が鼻息荒く、蘭子を抱き締めようとした瞬間、 「蘭子さん、僕もあなたのお力になりたいと思います。どうか、お話を聞かせていただけませんか?」  清貴が蘭子の方を向いて、にこりと微笑む。  秋人よりも頼りになりそうな男前の言葉に、蘭子は「あら」と目を瞬かせて、するりと秋人の腕から抜けた。 「私の話で良かったら、いくらでも」  そう言って蘭子は清貴の腕にすり寄ろうとしたが、「では、下で」と清貴は踵を返してかわし、一階の応接室へと向かった。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5434人が本棚に入れています
本棚に追加