第三幕 亡き当主の研究室

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       1  事件発生から一日。  現時点で分かっていることは、最初にミルクティーに混入された毒物は『ストリキニーネ』で、二番目に梨に注入された毒物は、『塩化第二水銀』だったということ。  犯人は、菊男の使っていなかった白いズック靴を履いて犯行に及び、犯行の際に毒液を靴に零してしまっている。  百合子の命を狙って、梨に毒液を注入しているところを華子に目撃され、バイオリンで彼女の頭を殴りつけた。  その際、華子が持っていた天花粉が散らばり、靴についている。  争う気配で目を覚ました百合子は、犯人の頬に触れている。『すべすべした美しい肌』を持ち、その体からは『バニラの香りがした』ということだ。  犯人は、百合子に触れられて驚いたのか、使った注射器を回収せずに逃走。  また、使われた注射器の出どころは、まだ分かっていなかった。  当初は、花屋敷家の主治医の所有物が盗み出されたのでは、という可能性も考えられたのだが、そうではなかった。  また、病院に運ばれた華子の意識も依然として戻っていない。  だが、朗報もあった。  病院から、華子の衣服の腰ベルトに鍵がつけられているという報告が入ったのだ。  それは、たったひとつしかないと言われている研究室の鍵だった。  研究室の鍵は、清貴と冬樹、秋人が立ち合いの下、薔子が病院で医師から受け取った。
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