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一行はそのまま花屋敷家に戻り、研究室のある二階へと向かう。
研究室は二階の端で、華子・百合子の部屋の隣に位置していた。
清貴、薔子、冬樹、秋人は扉の前まで来て足を止めた。
「鍵を開ける前に、少し失礼いたします」
清貴はそう言いながら、立膝をついてしゃがみ込み、鍵穴に針金を二本差し込む。
「もしかして、針金で開けようとしているのか?」
秋人は、わくわくした様子で隣にしゃがんだ。
「ええ、それも試してみたかったのですが……無理ですね。この鍵は随分と頑丈で重い。一般的なコソ泥が使う方法では、とても開きそうにないです」
と、清貴は鍵穴から針金を取り出して、ジッと見詰める。
冬樹が腰をかがめて、訊ねた。
「針金に何かついていたか?」
「いいえ、その逆です」
「逆?」
「錆以外、何もついていません。鍵穴に蝋を詰めて合鍵を作ったのではないかとも思っていたんですが、どうやらこの中に蝋が詰められた形跡はないですね」
清貴は立ち上がり、ふぅ、と腰に手を当てた。
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