第一章 それぞれの歩みと心の裏側

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 つまりこの骨董品店は、古美術の展示場兼倉庫のようなものでもあり、一見様に買ってもらうことなど期待していなかったのだ。 「ホームズさん自身、集客に熱心ではなかったんですか?」  そうですね、とホームズさんは手を止めて、腕を組む。 「僕も学生で、鑑定士である祖父の手伝いもあり、あれこれ忙しかったので、集客に熱心というわけではなかったですね」 「それでミーハーな人間は入ってこられないような雰囲気を作っていたわけですね」  私は納得して、大きく頷く。  これまで、ホームズさんのような美男子が店番をしていたのだから、『看板男子効果』はあっただろう。  実際、ホームズさんが店番をしていると、『今のお店にカッコいい人がいた』と若い女性が噂をしながら通り過ぎていくことがある。  だが、店の中にまで入ってくることはなかった。 『カフェだったら良かったのに』という声も聞こえてきたことがある。  それはきっと、あえて近寄りがたい雰囲気を醸し出していたのだろう。 「いえいえ、積極的に集客対策をしていなかっただけで、入ってこられないような雰囲気を作ったつもりはないですよ。曲がりなりにもここは店舗なので、お客様に入っていただけるのは嬉しいことです」 「そうだったんですか?」 「はい。常に『もっとたくさんの人に古美術に触れていただきたい』と思っていますし。最近、若い女性客が増えてきたのは、葵さんの小さな努力の積み重ねだと思いますよ」  えっ? と少し驚いて、私は自分を指差した。 「私の小さな努力ですか?」
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