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「義春さんが……? どういうお知り合いだったんでしょうか?」
「江田先生は、京大の学生さんなんですが、文筆家――作家でもあるんですよ。父は江田先生の作品を好んでいたそうです。彼は、子どもの扱いが上手だし、百合子姉さんにもとても親切で、菊男も正子さんも母も気に入っているんです」
へぇ、と清貴は目を光らせた。
「もしかして、お父様が元気になったのは、あの家庭教師が来た後からですか?」
その問いに薔子は少し考えてから、「そうかもしれません」と頷く。
「すげーな、どうして分かるんだ」
「心境の変化というものは、これまでとは違う何かがあって起こることが多い。義春さんにとって、彼は何かキッカケを与えた存在なのかもしれません。ぜひ、彼のことを知りたいですね」
「では、お呼びしましょうか?」
薔子が腰を上げようとすると、清貴は、いえ、と手をかざす。
「その前に江田正樹という人物について知っておきたい。秋人さん、小松さんに連絡をして、彼のことを調べてもらうよう伝えてください」
「よっしゃ分かった。すみません、薔子さん、電話借りますね」
秋人は、勢いよく応接室を出て行く。
小松というのは、正真正銘の探偵だ。
調査能力が高く、清貴は調べ物をする際、彼に依頼をしている。
「事前に彼の情報を入手してから、お話を伺いたいと思います」
清貴はそう言って、意味深に口角を上げた。
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