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その後、家頭邸に戻った清貴は書斎の椅子に腰を下ろすと、眉根を寄せたまま、両手を重ね合わせていた。
秋人はゲスト用のソファーで紅茶を飲みながら、美味い、と目を細めている。
「花屋敷家では、怖くて水も飲めなかったよ。俺に毒が盛られるとは思ってないんだけど、ほら、間違って入っていたらと思ったらさぁ」
秋人の軽口にも、清貴はポーズを変えないままだ。
「おっ、格好までシャーロックになりきるのか、ホームズ」
そう、清貴がしているのは、かのシャーロック・ホームズがしている仕草だ。
けらけらと愉しげに笑う秋人に、清貴は肩をすくめた。
「こうしていたら、何か分かるのではないかと思いましてね。本物の名探偵にあやかれたらと……」
清貴は、ふぅ、と息をついて、椅子にもたれる。
「おいおい、そんな寂しいことを言うなよ。しっかし、さすがのホームズも今回の事件は手を焼いているようだな?」
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