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「そうですね。何もかもが奇妙なんです」
「奇妙?」
「緻密に計画を立てているようでいて、ずさんでしかないようにも感じられる。一貫性があるのかないのか……」
清貴は、椅子を回転させて、天井を仰いだ。
「どのあたりでそう思うんだ?」
「すべてですね。最初のミルクティー毒物混入事件も、二番目の梨への注入に関しても、そして研究室を見ても、いろいろと思うことがあります。ですが一番は『バイオリン』ですね。なぜ、あれをわざわざ凶器にしたのか……」
清貴は額に手を当てた。
書斎が静まり返ったその時、トントンとノックの音がした。
開けっ放しの扉の横には、よれたスーツに無造作な髪型の中年男の姿があった。
「珍しく、しけた顔してるんだな、あんちゃん」
「小松さん」
清貴は額から手を離して、にこりと微笑んだ。
彼は清貴が雇った探偵の小松勝也だ。
「頼まれていたもの、調べておいたぜ」
小松はそう言って書斎に入ると、机の上に茶封筒を置いた。
「ありがとうございます」
清貴はすぐに、茶封筒を受け取って中を確認した。
「おっ、例の家庭教師のことだな?」
と、秋人も立ち上がり、机へと向かう。
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