第四幕 当主と青年の出会い

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       1  花屋敷家に戻ると、家庭教師の江田正樹と菊正、菊次郎の三人は、広い庭で追いかけっこをしているところだった。  江田は、菊正の背中をタッチして、いたずらっぽく微笑む。 「ほら、これでおしまいだ、僕の勝ちだね。それじゃあ、菊正君は問題集をやろう」  菊正は、ちぇっと口を尖らせながらも庭のガゼボに入って、椅子に腰を下ろしている。  その様子を、母親の正子が少し離れたところから微笑ましそうに眺めていた。  清貴と秋人は、そんな彼女の許へと歩み寄る。 「正子さん」  清貴が会釈をすると、正子は、あら、と振り返った。 「こんにちは、家頭さん」  清貴は、こんにちは、と返して、ガゼボに顔を向ける。 「菊正君と江田先生の相性は良いようですね」  そうなんです、と正子は嬉しそうに目を細める。 「こんなに家庭教師の先生に打ち解けるなんて、江田先生が初めてです」 「彼は、子どもの扱いが上手なんですね?」 「ええ、とても。菊正は体力を持て余している子なんですが、江田先生はいつも、すぐに勉強に取り掛からず、まず遊びを兼ねた運動をさせて、発散させてくれるんですよ。今日も、かくれんぼ、鬼ごっこをしてから、菊正に勉強を……」  正子はそう言った後、そうそう、と思い出したように清貴を見た。 「薔子さんに伺いましたよ。家頭さんは、江田先生のお話を聞きたいとか……?」  ええ、と清貴は答えて、正子を見た。 「なんでも、江田先生を紹介したのは、義春さんだったとか」
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