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「……華子夫人も、あなたに手を?」
いえ、と正子は顔を上げた。
「お義母様は、私を激しく叱責しますが、手を上げることはありません。夫や子どもたちには容赦なく手を上げるのですが……」
清貴は一瞬目を見開き、そうでしたか、と腕を組む。
「ご自分が叩かれないとはいえ、可愛い子どもたちに手を上げられるのは、見ていて辛いですね」
「………」
「華子夫人は、百合子さんにだけはあんなに優しいというのに……」
その言葉に、正子は顔を歪ませた。
「もしかして、私を疑っておられます?」
「いえいえ、そんなことは」
清貴は微笑んで手をかざしたが、一歩後ろで秋人が、そういえば、と眉根を寄せる。
正子は、やんちゃな二人の息子を育て、横暴な姑と夫に苦しめられているため、随分と所帯じみて見えるが、まだ二十代の女性――薔子や蘭子より若いのだ。
「江田先生を呼んできますね」
正子は逃げるように、ガゼボへと向かった。
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