第四幕 当主と青年の出会い

6/24

5432人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
「正子さんの肌も綺麗だったなぁ」  独り言のようにつぶやいた秋人に、そうですね、と清貴は頷く。  その後に秋人は、でもよ、といつものように頭の後ろで手を組んだ。 「『肌すべすべ問題』について、俺、ちょっと思ったんだけど」  はい、と清貴は秋人に視線を送る。 「華子ばーさんがひっくり返した天花粉が、犯人の頬についたから、ってのもあるんじゃねぇ?」  えっ、と清貴は眉根を寄せた。 「おしろいとか頬に付けたら、男でもすべすべになるじゃん?」 「そうなんですか?」  清貴は思わず前のめりになった。 「お前、顔におしろいつけたことねぇの?」 「ないですよ。逆にあなたはあるんですか?」 「色男のたしなみだよ」  胸を張る秋人に、清貴は少し呆れたように肩をすくめる。 「僕は色男ではありませんから。ですが、そう言われてみればそうですね。たしかに肌に粉を付けると、すべりは良くなりますね」 「やだ、なんかいやらしい」  と、秋人はわざとらしく、口に手を当てる。  清貴はそんな彼を無視して、考え込むように目を伏せる。 「そして犯人は靴だけじゃなく、服にも天花粉が付いていたはず……」  その時、少し離れたところを使用人が歩いているのが見えた。彼女は、トレイを手にしている。ガゼボに茶菓子を運ぶ途中のようだ。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5432人が本棚に入れています
本棚に追加