5432人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
「正子さんの肌も綺麗だったなぁ」
独り言のようにつぶやいた秋人に、そうですね、と清貴は頷く。
その後に秋人は、でもよ、といつものように頭の後ろで手を組んだ。
「『肌すべすべ問題』について、俺、ちょっと思ったんだけど」
はい、と清貴は秋人に視線を送る。
「華子ばーさんがひっくり返した天花粉が、犯人の頬についたから、ってのもあるんじゃねぇ?」
えっ、と清貴は眉根を寄せた。
「おしろいとか頬に付けたら、男でもすべすべになるじゃん?」
「そうなんですか?」
清貴は思わず前のめりになった。
「お前、顔におしろいつけたことねぇの?」
「ないですよ。逆にあなたはあるんですか?」
「色男のたしなみだよ」
胸を張る秋人に、清貴は少し呆れたように肩をすくめる。
「僕は色男ではありませんから。ですが、そう言われてみればそうですね。たしかに肌に粉を付けると、すべりは良くなりますね」
「やだ、なんかいやらしい」
と、秋人はわざとらしく、口に手を当てる。
清貴はそんな彼を無視して、考え込むように目を伏せる。
「そして犯人は靴だけじゃなく、服にも天花粉が付いていたはず……」
その時、少し離れたところを使用人が歩いているのが見えた。彼女は、トレイを手にしている。ガゼボに茶菓子を運ぶ途中のようだ。
最初のコメントを投稿しよう!