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しばし黙り込んでいた江田だったが、すべてを知り尽くしているという雰囲気を醸し出している清貴を前に、観念したようにため息をついた。
「さすが、噂の名探偵ですね」
あんたのことを調べたのは、別の探偵なんだけどな、と秋人が小声で囁く。
そんな秋人を無視して、清貴は話を進めた。
「江田先生に伺いたかったんです。義春さんは、そんなあなたの正体を知って、その上でこの家に入れたんですね?」
そうです、と江田は頷く。
「……僕の父は、花屋敷家から追い出された後、京都を離れて、四国に移り住みました。そこで母と知り合い、僕が生まれたんです。父の過去について直接聞かされたことはなかったんですが、人づてに噂を聞き、父に確かめたところ、本当のことを教えてもらいました。僕には、異母姉がいるということも」
単純な好奇心でした、と江田は話を続ける。
「僕は一人っ子だったので、僕の姉はどんな人なのだろう、と。百合子さんの目と耳が不自由という話ももちろん聞いています。大金持ちの屋敷で、可哀相な目に遭っているのではないか、と勝手に心配もしていました」
彼は本当に優しい人間なのだ、と清貴と秋人は感心しながら話を聞く。
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