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しばらくして、清貴と秋人は、冬樹とともに研究室に入った。
部屋中、水びたしだ。
どうやらカーテンに火をつけたようで、ほとんど燃えかすになっていた。
窓は割れて床にはガラスが散乱し、壁は真っ黒に焦げている惨憺たる有様だが、棚が窓際から離れていたおかげで、薬品は無事だった。
だが、今は棚の中に薬品は、ほとんどない。消火活動の際、消防士たちが『危険だから』と、いち早く回収したためだった。
冬樹は、はぁ、と息を吐き出した。
「これじゃあ、また毒物を盗まれていても分からないな」
「これって、間違いなく放火だろ? もしかして毒物を盗むために放火したとか?」
秋人は、ほぼ空になった棚を見た後、清貴の方を向いた。
「それはどうでしょう。既に何度も毒物を盗み出しているのですから、今さら、わざわざ火事を起こさなくても……」
清貴は、よく分からない、という様子で、顔をしかめる。
「となると、やはり証拠の隠滅か?」と冬樹。
「まぁ、それが濃厚ですね。この部屋に何があったのか……」
清貴はぶつぶつと洩らしながら、棚に目を向け、「うん?」と目を凝らした。
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