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三人が顔を向けると、薔子が青い顔を浮かべている。
「この事件の犯人は、お父様よ……」
ですが、と冬樹が困惑したように言う。
「薔子さん、あなたのお父様は……」
「ええ、そうよ、すでに亡くなっているわ。これは、お父様の亡霊が引き起こしているのよ。お父様は、百合子姉さんに優しかったけど、本当は憎んでいたのよ。そして母のことも。これはお父様の復讐なのよ!」
薔子は大声でそう言うと、ああっ! とその場にしゃがみ込む。
「薔子さんっ」
冬樹はすぐに薔子の許に駆け付け、その体を支えた。
「一階で休みましょう。疲れているんですよ」
そう言いながら、冬樹は薔子に寄り添うようにして一階へと向かった。
秋人は二人を見送った後、振り返って清貴を見る。
「ホームズ、俺らも一階に行くか?」
「いえ、僕はもう少しこの部屋を調べます」
「じゃあ、俺も付き合うよ。にしても、どうやって忍び込んだんだろうな」
この研究室の鍵は、念のためと冬樹が預かっていた。
「もしかして兄貴、知らない間に鍵を盗まれていたりして?」
「今、ここに入るのに、冬樹さんが開錠していたのを見たでしょう?」
「あ、そうか」
そんな話をしながら、清貴はぐるりと部屋を見回して、考え込む。
ふと、暖炉に目を留めて、清貴は「――あっ」と口を開いた。
あっ? と、秋人は、清貴の方を向く。
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