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「それじゃあ、出入口ってどこだ?」
「暖炉です。ですが、煙突から侵入したのではありません。普通、家に複数ある暖炉は、煙突を共有しているものです。現にこの家に煙突は一つしかない。そして、このすぐ隣の部屋にも暖炉はあったでしょう? ということは――」
清貴は暖炉に入って、中を確認する。
鉄板で仕切られていたが、それを外すと少しの空洞があり、その斜め向こうにも鉄板があった。
それを外すと――。
「うおっ、向こうの部屋が見える!」
「ええ。犯人は暖炉を通って、この部屋に入っていたわけです」
清貴はそこまで言い、口を噤んだ。
鉄板と鉄板の間の細い空間に何かを見付けたようで、腕を伸ばしている。
「何かあったのか?」
「封筒が……」
清貴は茶封筒を手に暖炉から出て、体に付いたすすや埃を払う。
もしかして、と秋人が歩み寄る。
「犯人はそれを燃やすために放火を?」
「それは違うと思います。この書類を処分するのに、わざわざ部屋ごと燃やす必要はないでしょう。それに、もし部屋とともにこれも燃やしたいなら、暖炉と暖炉を隔てる二枚の鉄板の間に隠したりせず、カーテンの側に置いておくでしょうし」
清貴はそう言いながら、茶封筒の中を確認する。
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