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概要の後半は、どのような手順で罪を犯していくのか、詳細に記されていた。
そっか、と秋人は腕を組む。
「犯人はこの概要を参考にしたわけだな」
「そのようですね。そして、なるほど、そういうわけでしたか……」
原稿用紙を持つ清貴の指先が、小刻みに震えている。
「ホームズ?」
秋人が視線を合わせると、清貴は歪んだ笑みを浮かべていた。
思わぬ迫力に、秋人は言葉を詰まらせ微かにのけ反った。
「これで分かりました」
「分かったって、犯人がか?」
はい、と清貴は強い眼差しを見せた。
「この概要で?」
「ええ、すべての謎が解けました」
俺にはちっとも分からない、と秋人は目を皿のようにして原稿用紙を眺める。
「だって、この小説の概要では、義春自身が犯人だろ?」
「詳細は、後ほど説明します。とりあえず、僕は義春さんについて詳しく知りたい。まずは、担当した編集者にお話を伺わなくては……」
そう言って清貴は、颯爽と研究室を出た。
「あ、ちょっと待てよ」
秋人は慌てて、清貴の後を追う。
それは、最終章の幕開けだった。
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