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「本当に簡単なことだったんです。華子夫人の寝室の暖炉と研究室の暖炉は、二枚の鉄板を隔ててつながっていました。犯人は暖炉から暖炉へ、トンネルをくぐるようにして侵入していました」
そうだったのか、と皆は顔を見合わせている。
「さて、皆さん――、義春さんが小説を書いていたのを知っていますか?」
その問いかけに頷いたのは、江田と正子だけだ。
「義春さんは、この家をモデルにしたミステリー小説を書いていました。その『概要』が暖炉と暖炉の間から出てきたのです。なんと、犯人はこの『概要』通りに、そのまま罪を犯していたんですよ」
清貴はテーブルの上に置いてある茶封筒から、原稿用紙を出して皆に見せる。
一同は大きく目を見開き、絶句していた。
「これを見て僕は犯人が分かりました。概要には、こうも書かれています」
『華子を殺害後、いきなり百合子の命が狙われなくなるのは不自然なので、もう一度毒を盛る。
(それは、未遂に終わらせるか、決行するかは未定。百合子には個人的に恨みはないので、未遂でも良い)』
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