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「もし、犯人が救いようのない人物ならば、百合子さんのミルクティーに毒物を入れるかもしれない、と僕は考えました。実行するなら、今日の可能性は高い。皆が集まっている中で百合子さんが亡くなるというのは、劇的です。それに百合子さんのミルクティーは、いつも通り三時少し前に用意されていましたからね。そう考えた僕は、皆さんが集まる直前に、百合子さんのミルクティーと、犯人のミルクティーを入れ替えておきました」
えっ、と皆は目を見開いて、自分のミルクティーに目を落とす。
「ご心配なく。犯人以外のミルクティーはただのミルクティーです。今、犯人は、自分の変化に気付いているはずです。少しずつ頭がぼんやりしてきていることでしょう。犯人が入れた毒は、痛みを感じない。やんわりと体中を回り、気を失うように倒れてそのまま命を失くします。ですが、助かる方法はあります。その解毒剤はここにあるので」
と、清貴は、冬樹の方を向いた。
冬樹は内ポケットから、小瓶を取り出して見せる。
「――今のうちでしたら、冬樹さんが持っているこの解毒剤を飲んだら助かります」
そう続けた清貴に、皆は困惑の表情を浮かべている。
そんな中、たった一人、青褪めて震えている人物がいた。
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