第五幕 そしてすべてが明らかに

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「僕は、百合子さんのカップを回収し、菊正君のカップに睡眠薬を入れたわけです。冬樹さんが持っていた薬は解毒剤ではなく、ただのミルクです。彼に与えずに床に捨てたのは冬樹さんなりのお灸ですよ」  そうですよね? と視線を送る清貴に、冬樹は「あ、ああ」とぎこちなく頷く。 「さて、あらためて、事件についてご説明をしたいと思います。皆さん、今一度、お掛けください」  そう言った清貴に、皆は思い思いに頷き、椅子に腰を下ろした。  正子と菊男は、菊正を抱きかかえて部屋の端にあるソファーに座った。 「おそらく菊正君が、暖炉から研究室に入れると気付いたのは偶然でしょう。かくれんぼなどをしていて見付けたのかもしれません。  その時に義春さんが書いたこの概要を発見したわけです。菊正君が、それをそのまま実行しようと思った動機は、さっき彼自身が語った通りだったのでしょうね。祖母は暴君で皆の嫌われ者、伯母は厄介者、殺害計画は祖父の書いたものということで、罪悪感も少なかったのかもしれません」  清貴は一拍置いて、口を開く。 「第一の犯行。義春さんの概要には、こう書かれています」  と、清貴は、皆に概要を見せた。
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